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ブログ

図書館にソフトウェア所蔵の提案

2023-05-22

私は公共図書館に,自由ソフトウェアを所蔵することを提案したい。

図書館は,知的創造物を収集および保存する施設である[1]。私は,ソフトウェアも収集・保存すべき知的創造物であると考える。

個人用コンピュータが普及して,約二十年から三十年になる。いまでは,学術研究,文化活動や商業において,コンピュータはなくてはならないものになっている。ソフトウェアも,図書館に所蔵すべきだ。

ソフトウェアはどのような作品か

コンピュータとは,計算機である。そして,ソフトウェアはコンピュータで処理される計算式のようなものだ。

1801年に発明されたジャカード織機は,記録された指示にしたがって織ることができた[2]。当時の記録媒体は紙で,孔をあけて記録していた[2]。まさに,現代でいうところのソフトウェアにあたる。

家庭に織機が普及し,孔あき紙が図書館に所蔵されていたら,家庭でさまざまな紋様の布を織ることができただろう。

ソフトウェアは,特定の処理をコンピュータに指示するものである。これも知的創造物の一種類であり,図書に準ずるものだ。

所蔵すべきソフトウェア

では,図書館はどのようなソフトウェアを,どのようなかたちで所蔵するべきだろうか。

自由ソフトウェアは,自由に所蔵し配布することができる。自由に実行,改変,および改変の有無にかかわらず配布することができるからである[3]。

研究や改変の容易さを考えると,ソースコード(人間が読める形式)で所蔵すべきだ。もちろん,保存容量や労力に余裕があれば,バイナリ(機械が直接読む形式)を所蔵してもいいかもしれない。所蔵すべきと思うソフトウェア群を,下記に示す。

そのほかに,自由なGNU/Linuxディストリビューションのインストールイメージを所蔵してもいいかもしれない。中古のコンピュータを買った帰りに,図書館でシステムをインストールできる。

ソフトウェアの所蔵による利点

ソフトウェアを所蔵し配布すると,インターネット接続を持たない人も,ソフトウェアを入手することができる。貧しい人,旅行中の人,子どもなどでも,必要なソフトウェアを手に入れられる。

また,入手のたびにインターネットを通す必要がないので,帯域や時間,エネルギーの節約にもなる。

それだけではなく,情報技術に対する関心や知見を深めることにもつながる。図書館には情報技術書もあるはずだ。そしてソフトウェアがあれば,じっさいに動かして学ぶことができる。

具体的な配布の方法

問題はここだ。ソフトウェアを所蔵するとして,それをどのように配布するか。

いくつか,思いつくものをあげてみた。

記録媒体を貸出

まずは,本のように記録媒体を貸出すこと。ソフトウェアを,CD-ROMやUSBメモリなどに入れて所蔵する。管理上の理由から,閉架にしたほうがいいかもしれない。後述するが,改竄などの危険がある。

印刷され製本された紙の本の場合,改竄やすりかえは容易ではない。借りてきた本の中身を書きかえて返したり,バーコードを別の本に貼って返したりする事件は,多くはないだろう。

しかし,電子データは話が違う。記録媒体を持ち帰ったり,私用の機器に接続したりしたときに,中身を書きかえることができる。

書き換えができない媒体に保存したとして,アップデート(更新)の問題がある。紙の本はひんぱんに改訂されることはないだろうが,ソフトウェアは一日に何度も改訂されることさえまれではない。書きかえができない媒体の場合,改訂版を新たに所蔵するさいには,旧版の媒体を廃棄する必要があるだろう。この場合,費用や環境などの問題が生じる。

書庫に返された時点で再度書込む,というのが現実的な方法かもしれない。

利用者の記録媒体に保存

つぎに,利用者の保有する記録媒体に保存する方法。最初の問題は,どの記録媒体に対応させるかだ。

現在,民生用としてひんぱんに使用されている携帯型の電磁記録媒体は,USBメモリ,SDカード,CD-ROMといったところだろうか。専用の機器(RaspberryPiなどを使用してつくることができる)を設置し,利用者の操作によってこれらの記録媒体に書き込めるようにするといいだろう。

問題は,書き込むことによって記録された他のデータや,媒体そのものにおよぼす影響だ。書き込むさいに既存のデータを破壊してしまうかもしれないし,一回かぎり書き込み可能な媒体もある。インストールイメージの書き込みは,媒体内のデータを全て消去する。ファイルシステムの非対応や不整合から媒体を初期化する場合もあろうが,無論そのさいには全てのデータが消去される。

こういった技術的な注意事項は,免責の旨とともにあらかじめ掲示しておくべきだろう。

館内のサーバから配布

これは,コンピュータ・ネットワークを使用するという点で,前二者とは異なる方法である。ネットワークに接続できない状態の機器では,使用できない。

利点としては,媒体や図書館の機器を直接利用者に触らせなくて済むことがあげられる。ネットワーク経由による不正行為の危険は残るものの,記録媒体を入れ替えたりといった手法での不正は防げる。

ここでいうコンピュータ・ネットワークとは,インターネットを指すのではない。館内のLANを介して,FTPなどを使って頒布するのである。

参考文献

  1. 大串夏身氏・常世田良氏著 2022年 図書館概論 ISBN 978-4-7620-3149-6 10ページ
  2. ウィキペディア ジャガード織機 2022年4月14日 14:48UTC 版
  3. 自由ソフトウェアとは? GNUプロジェクト