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OpenStreetMapは旅でどこまで使えるか──OSMを使って旅してみた!

2022-08-08

結論から述べよう。西洋紀元2022年時点のOpenStreetMapは,高校生が旅をする場合にも,普通に使える。

旅でOSMを使う

OpenStreetMap(以下OSMと略す)は,みんなでつくる自由な地図である。旅などで利用する場合は,この地図データを機械に解釈させて使うことになる。私が今回利用したのは,OsmAnd+という地図アプリ。これは,OSMのデータを機器内にダウンロードし,オフラインでも詳細な表示ができる。Organic Mapsというアプリもある。こちらは,OSMの更新が反映される頻度がきわめて少ないかわりに,F-Droidの定める「好ましくない機能」がなく,自由とプライバシーがより尊重される。ただし,自身の編集内容をすぐに確認できることから,OsmAnd+を利用した。「好ましくない機能」があるとはいえ,こちらもF-Droidがソースコードを審査のうえ認可しているので,そこまで危険であるということはなかなか考えられない。

OSMは「自由」な地図だ。さまざまな用途で,地図データを使うことができる。聞いたところによると,防災や学術研究でも使われているらしい。もちろん旅をするにあたっても,OSMの豊富な情報を活用できる。OSMには,営業時間や連絡先,車椅子で利用できるか,インターネット接続(無線LANなど)があるか,といった情報を記入することができる。建物の形は利用が許された航空画像からとることができるが,こういった追加情報は,じっさいに訪れた人が書き込んでくれなければ地図に載らない。

旅をしていると,人の善意に頼ることが少なくない。OSMもそのひとつだ。殺伐とした時代ながらも,OSMに書き込んでくれる人はいる。じっさい,主要な建物や施設はほとんどOSMに載っている(もし載っていなかったら,ぜひ載せていただきたい)。

私はOSMを使ってホテルを探した。OsmAnd+ には地物を種類で検索する機能があり,一覧から「ホテル」や「ゲストハウス」にチェックをいれると,地図上にホテルやゲストハウスが強調表示される。

ちかごろKDDIが通信障害をおこしてしまった事件があったが,OsmAnd+ なら,そのような場合でも公衆電話を探すことができる。もっとも,公衆電話がOSMに載っていればの話だが。だから私は,公衆電話を見つけたら積極的にOSMに書くようにしている。

OSMの問題点

しかし,まるでいいことづくめのようにみえるOSMにも,いくつか問題点はある。

まず,OSMに書き込む動機付けが少なく,主要な施設以外は載っていないことが多い点だ。ポイント稼ぎアプリなどと違って,OSMの書き込みにはいっさい金銭的報酬はない。私の家族には「カネがもらえないのに,書き込む人なんているのか?」などと言っている人もいる。

強いて言うなら,地図を描く対価として得られるものは地図である。しかし(自分の住んでいるところや,これから訪れる予定のところなどをのぞいて),地図を描いた分だけ,じっさいに自分にとって役立つ地図が手に入るわけでもない。等価交換とはいかないのだ。

そして,OSMは誰でも編集できることから,いたずらや編集誤りが起こりやすい。私だって,なんどかタグ付けを間違えたこともある。もちろん,ほとんどの編集は正しく行われているし,日常の利用に差し障ったことはない。しかし,ときとして地図データが破壊されることがあるということに留意しておく必要がある。

また,OSMの特性として,地図そのものと表示されている地図は違うものだということにも留意していただきたい。地図データをソフトウェアに解釈させ,地図を表示しているからだ。OSMの地図データをどれだけ活用できるかは,自身が使うソフトウェア次第ということになる。だから,OSMを使った地図ソフトがうまく動作しなくても,それはOSMのせいだとは限らない。地図ソフトのバグ(プログラミング上の誤り)などを原因としている可能性もある。

旅でOSMに貢献する

さて,旅でOSMに貢献する──つまり,旅先でOSMに書き込む──方法について述べよう。

大きく分けて二通りの方法がある。まず,その場でOSMを編集してしまうこと。そしてもうひとつが,あらかじめメモをとっておいて,あとで編集すること。

前者の場合,ReplicantまたはAndroidではVespucciがおすすめ。iPhoneやiPadではGo Map!!というアプリが使いやすいと聞いている。なお,OsmAnd+でも,点にタグをつけて追加することはできる。

StreetCompleteは一風変わった編集アプリだ。修正や確認が必要な点が地図上に表示され,かんたんな質問に答えるだけでそれらが修正されるというもの。OSMにアップロードされるときは,一種類の編集がひとつの変更セットとされる仕様なので,留意願いたい。

場合によっては,その場でラップトップを開いて,iDJOSMを使ってもよいかもしれない。飲食店や公園などラップトップが開ける環境であれば,公衆無線LANやテザリングでインターネットにつなぎ,衛星画像を見ながら地物の形を描くこともできる。管理者や従業員の方と話すことができれば,地図に書き込むための情報を得るだけでなく,既存の情報が問題ないかを確かめることもできる。

その場で編集してしまう方法の利点は,なんといっても手間がはぶけるところ,そして,必要な情報を収集しやすいところだ。一方で,タグ付けなどを間違えてしまいやすいという欠点もある。こんどは,あらかじめメモを取って編集する方法について解説したい。

旅先でたまたま訪れたところを地図に書き込むのだから,書き込む場所は決まっていない。だから当然,メモもGPSつきスマートフォンでとらざるを得なくなる。OsmAnd+にもメモ機能はあるし,OSMTrackerでは位置軌跡をとりながらメモをとれる。そこで,たとえば「闘志カフェ 10時から15時まで,無線LANあり,車椅子で利用できる」などと書いておくわけだ。そして,あとでそれを見ながら地図に書き込む。

あるいは,写真をメモ代わりにしてもいいかもしれない。もちろん,撮影機器にGPS機能がついている必要がある。

どうせ写真を撮るのなら,Mapillaryに上げてもいいのではないか。Mapillaryは自由に利用できるストリートビューのようなもので,有志が撮影したGPSつき写真を地図上に表示する仕組みになっている。

Mapillaryの欠点としてまずあげられるのが,アップロードするにはプロプライエタリ(不自由)なソフトウェアを使わざるを得ないことだ。OSMではAPIがあり,編集ソフトを開発できる。しかし,調べてみたところMapillaryはそうではなさそうだ。

つぎに,家や宿に着いてからすぐに地図を編集できるわけではないこと。写真をアップロード(送信)したあと,公開されるまで時間がかかるのだ。アップロードされた写真はAIによって審査され,顔やナンバープレートなどの個人情報にぼかしが入れられる。ほかのカメラなどで撮影した画像をコンピュータからアップロードした場合には約一週間,Mapillaryアプリで直接撮影してアップロードした場合は数日ほどで公開される。

iDやJOSMでは,Mapillaryの画像を見ながら地図を編集することができる。しかし,AIは位置情報の誤りを修正してくれないという点に留意願いたい。Mapillaryを見ると,どう考えてもおかしい位置に写真がある,ということがときどき見受けられる。