笠井闘志個人ウェブサイト

ブログ

令和のDKが紙の時刻表を使う理由

2023-01-30

最近じかに私に会ったことのある方なら,お気づきかもしれない。私のかばんに紙の時刻表が入っていることを。

私は近ごろ,学業や交友の関係で鉄道を使う機会が増えた。政治や経済の状況しだいではあるが,進学後は鉄道で旅をしてみたいとも思っている。

こういった事情があって,私は長野駅前の書店で時刻表を買いもとめた。

私が紙の時刻表を使うのは,紙特有の使い勝手を好むからだけではない。

たしかに,いまでは乗換案内や地図アプリなど,スマートフォンで簡単に時刻や移動経路を検索できる。しかし,それはいくつかの問題がある。

プライバシー

乗換案内のウェブサイトやアプリを使用することは,プライバシーにとって重大な脅威である。

なぜなら,移動しようとする日時や区間などの情報を運営会社に知らせてしまうからである−−多くの場合,個人を識別できる情報とともに。

ウェブサイトであれば,Cookieやその他の方法によってウェブブラウザが識別される。AmiUniqueというウェブサイトで識別情報を確認できるが,ウェブブラウザはじつに多くの要素によって識別され得る。IPアドレスを変えたところで,たやすく逃げられるものではない。

さらに,乗換案内を含めた多くのSaaSSは,JavaScriptを使用する。

JavaScriptは多くの場合,利用者のコンピュータのなかで実行される。そのため,通常収集できる範囲を超えてさまざまな情報を収集することができる。

アプリの場合も危険だ。そもそも機器にソフトウェアを導入すること自体が危険をともなう行為であるから,ほんとうに信頼しているソフトウェアでなければ導入しないほうがいい。

スマートフォンむけアプリは,権限の設定にもよるが,ウェブサイトより情報収集や追跡がしやすい。

たとえウェブサイトやアプリの運営者に悪意がないとしても,不必要に情報を渡すことは危険だ。運営者が設定や操作を誤った場合,収集された情報がもれてしまうおそれがある。

オフライン

まえの記事で,つねにインターネットにつながっていたくないと述べた。

紙の時刻表は,当然ながらインターネット接続を必要としない。商業的な監視を避け,インターネットから離れて旅の計画を立てることができる。

旅をしているうちに,寄り道や計画変更をしたくなるときがある。そういったときにインターネットを使う必要がないと,なんだか気が楽になる。

おなじ理由で,旅のときにはウィキボヤージュも印刷して持ち歩いている。

スマホの見すぎで2度乗り過ごし

鉄道旅とインターネットでいえば,ひとつ苦い経験がある。

昨年,用事があり青春18きっぷを使って移動していたときのこと。そのとき,私は高速のモバイルルータを賃借して旅に出ていた。

さて,私は乗車中,スマートフォンで動画を見ていた。ふと降車駅が気になり,乗換案内を開いた。時すでに遅し,本来降車すべき駅を数駅過ぎたところだった。

それから,私はつぎの駅で降りて反対方向の列車に乗った。しかし,さきの誤ちをもう一度繰返してしまった。

この経験から私は,移動中はできるだけオフラインになるようにしている。

いま思えば,イヤホンのせいで案内放送が聞こえにくくなっていたためなのかもしれない。いずれにせよ,インターネットに没頭することの恐ろしさを思い知らされた経験だった。

自由

ここでいう自由というのも,自由ソフトウェアという意味だけでなく,もっと広い意味である。

簡潔にいえば,自分が乗る列車は,自分で決めたいということ。

出発地と目的地,そして時刻を入力する。すると乗換案内のサーバーから返答が来て,乗るべき列車を指示される。こんな旅はなんだか自由じゃないな,と思うようになった。

状況や旅の目的も,一人ひとり違っている。紙の時刻表にはたくさんの列車が載っていて,そのなかから乗る列車を自分で決めることができる。途中下車をしたいときにも,つぎの列車をすぐに把握できる。

暇つぶし

最後に,紙の時刻表は移動ちゅうの暇つぶしにもなる,ということをつけくわえたい。

時刻表の索引地図には,日本じゅうのJR路線,場合によっては私鉄路線も載っている。今回の旅の計画を再確認したり,つぎの旅先を検討したりするときに使える。

営業案内やおトクなきっぷ情報などは,移動中の読みものとしても適している。