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国立国会図書館に行ってみた

国立国会図書館東京本館に行ってみたので,その様子や問題点などを述べたい。

18禁の図書館

国会議事堂前駅の階段を上ると,そこはわが国の中枢,官庁街である。

国会記者会館を横目に見て,総理官邸前を右に曲がる。国会議事堂の裏側(もちろん,正門に対しての裏側である)を通り,国道426号を北上する。

この街には緊張感がただよっている。たくさんの警察官が目に入る。なにしろ,国会議事堂やら首相公邸やらがある街なのだ。

北西に,現在の与党である自由民主党の看板が見える。このまま北上を続けると,国会図書館前の交差点に至る。

道路をはさんだ東側には,永田町駅の第一出口がある。ここが国立国会図書館に最も近い駅である。国会図書館前の横断歩道を渡り,右に曲がる。国立国会図書館の門に到着した。

すでに利用券を持っている方は,そのまま本館の改札を通ればよい。私はまだ利用券を持っていなかったので,新館に向かった。

書類に記入し,身分証とともに窓口に差出す。じつはこの図書館,入館するだけでも登録が必要なのである。18歳に満たない者は登録を受けられず,利用できない。

持ち込める物も限られている。例をあげると,カメラや大きなかばんなどを持ち込むことは許されていない。これらの物品は,改札を通るまえにあらかじめ鍵つきの戸棚に入れなければならない。

国立国会図書館は,古文献や絶版になった本など希少な資料を数多く所蔵している。資料を毀損することがないよう,このような制限を設けているというのだ。

館内の様子

館内ではいっさいの撮影が許されていない。その理由は,おそらく次のいずれかだろう

図書館への侵入や破壊に手を貸したくはないので,公開されている館内案内図に掲載されている場所に関してのみ,また,図書館や資料を危険にさらさないと思われる事項のみを述べる。

荷物を預けて新館の改札を通ると,雑誌カウンターがある。私は連絡通路を通り,本館へ向かった。

意外だったのは,公衆電話が置かれていること。これなら,携帯電話がなくても館外と連絡を取れる。また,館内には冷水機があるため,喉がかわいたときに水を飲める。

専門室という,その分野専門の資料や目録が置かれている部屋がある。この部屋では,一部の資料は開架となっている。専門室には,憲政資料室地図室などがある。

本を読むには

本館の図書カウンターには,真理がわれらを自由にするという言葉が刻まれている。その前には、据置き型のコンピュータが並べられている。

専門室において開架となっている資料のほかは,コンピュータから申請しないかぎり閲覧できない。利用券を読取機の上に置き,あらかじめ定めたパスワードを入力すると,コンピュータを利用できる。

ここで書名や著者名を入力すると,画面に資料が一覧される。クリックして詳細を確認し,読みたい資料に相違なければ,閲覧申込に進む。資料を提供する準備が整ったら,利用券を持ってカウンターに行くのだ。

後述するが,このシステムにはプライバシー上の問題がある。だれがどの資料を読んだかが,伝送され電算処理されるのである。

なお,国立国会図書館のコンピュータでは,ウェブを閲覧することもできる。私のウェブサイトのおすすめ本リストを開き,片っ端から利用請求することも可能である(ただし,いちどに利用できる資料数は限られているが)。ウェブの閲覧内容はすべて記録されるので,留意が必要だ。

議員さんは安心して本を読めるのか--プライバシー保護の問題

国立国会図書館は,国会議員に職務上必要な資料を提供するという役割を持っている。国立国会図書館はその特性上,一般の公共図書館よりも厳格にプライバシーを保護することを求められる。

当然のことだが,国会議員の職務は直接国政に関わっている。読む本の内容さえも,各方面から関心が向けられることは想像に難くない。

どのようなことを調査しているかがわかれば,つぎの会議でどのようなことを発言するかが推測できる。自分にとって都合の悪いことを調べている議員さんは,あらかじめ握ってあるあんな弱みやこんな弱みを使って,脅して・・・・・・なんてことを考えるやからも,いないとはいえない。

図書館とプライバシー保護

図書館はすくなくとも前世紀から,利用者のプライバシーを保護することを求められてきた。これは,どの本を読んだかという情報が,個人の思想信条 に関わるからである。

コンピュータが図書館業務で使われるようになる前は,貸出情報を紙で管理していた。資料を返却したら貸出の記録が消失する,ブラウン方式という方法が用いられていたという。現在でも,ほとんどの図書館は資料返却後に貸出情報を消去するよう設定している

国立国会図書館の場合

国立国会図書館において資料を閲覧するための過程は,さきに述べた。誰がどの語句で検索し,どの資料を請求したか。さらには,どれくらいの時間が経過してから返却したかといった情報が,伝送されて処理されるのである。

国立国会図書館の場合,資料請求の記録が残り,マイページから確認することができる。記録を保持している以上,窃取される危険はある。クラッカーが不正アクセスをするかもしれないし,内部の人間が賄賂や脅迫で動かされるかもしれない。あるいは,操作の誤りによって意図せぬところへ流れ出るかもしれない。

館内の掲示によれば,館内のコンピュータで閲覧したウェブサイトの内容も記録されるという。国立国会図書館でなにを調べたかは,すべて記録されているのだ。まあ,Googleも同じようなものなのだが。

国立国会図書館を使う場面

国立国会図書館は,さきに述べたようにプライバシー上の問題がある。つぎの条件を満たす場面でのみ,利用すべきだろう。

その他の場合は,読みたい本を読む最後の手段として使うべきである。一般人が気軽に行けないところに位置しているうえ,プライバシーの問題もある。国立国会図書館に行くまえに,近所の図書館で探してみるべきだ。

参考文献